『身の丈発言』による英語民間試験の問題に関するまとめ
今回は何を教えてくれるのかな?
萩生田光一文部科学相が11月1日、英語民間検定試験の来年度の『大学入学共通テスト』への導入を見送ることを表明しました。
常日頃「正しい勉強の仕方」と題して受験に関するブログを書いている以上、この一連のニュースは見過ごせないことでした。
ですので、今回は「正しい勉強の仕方 番外編」と題してブログを書くことにいたします。
概略を解説して、問題点を説明しつつ、一連の流れを紹介します。
- 『大学入学共通テスト』とは何か?
- 英語民間検定試験の利用の問題点とは何か?
- 『身の丈発言』とは?
各種ニュース
まずは最新ニュースを引用し、現在の状況を分かりやすく説明します。
民間試験の活用の有無も含め制度の見直しを進め、24年度での新制度の導入を目指すとのこと。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191101-00000010-mai-life
英語民間試験の受験に必要な共通IDの発行は1日から受け付けが始まる予定でしたが、それを取りやめたそうです。
このニュース記事が分かりやすくまとまっています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191101/k10012159841000.html
こちらの記事では、野党が痛烈に批判しています。
https://mainichi.jp/articles/20191101/k00/00m/010/100000c?inb=ys
もし辞任なんてことになったら、安倍内閣も批判を受けるのは自明の理ですね。
(今のところ辞任の予定はありません)
菅原一秀前経済産業相が辞任し、次いで河井克行前法相が辞任し、すでに二人も辞任しているのですから。
小泉進次郎環境相も失言を責められていましたし、内閣自体に言及されるのはやむをえません。
現役の学生からも、たくさんの批判が相次いでいるニュースまで。
https://mainichi.jp/articles/20191101/k00/00m/040/076000c?inb=ys
私がツイッターで繋がっている方も、「英検受験料返ってくるかなぁ」とつぶやいていました。
受験に関係ないなら、お金払ってまでは受けない予定だった、って人がいても普通ですよね。
保護者達からは「ほっとした」との歓迎の声が出ているとのニュースも。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191101-00000547-san-life
現場も混乱していましたし、性急すぎた感は否めませんね。
四年制大学の7割が利用予定だったとの記事です。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191101-00010001-koukousei-soci
国が推進していたので、利用予定大学が多かったのも、言わずもがなですね。
私の出身大学の早稲田大学のように、英語検定試験を利用して入試の英語試験を免除する(あるいは優遇する)ことになっている学校もすでにあったので、丁寧に進めていれば制度自体は受け入れられやすかった可能性はあります。
(私の出身学部の早稲田大学法学部は対応していませんが)
この記事によると、今年の夏に取ったアンケートでも、すでに不安の声が非常に多かったそうです。
http://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/5803
今後一年をメドに結論を出すそうです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191101-00050144-yom-pol
それにしても、これだけ推進していた政策で、いざIDを発行する当日になって「自信持っておすすめできない」とは・・・。
受験生を振り回すのもいい加減にしてもらいたいね
『大学入学共通テスト』とは
『センター試験』
そもそも今回の問題はどういう発端で、どういう経緯を辿って、延期という結論に帰結したのでしょうか。
紐解いていきましょう。
大学に入るために受験する試験の一つに『センター試験』があります。
『センター試験』の正式名称や歴史については話がそれるので、今回は割愛させていただきます。
国公立大学を一般受験する生徒は必ず『センター試験』を受験することになります。
最近では『センター試験を利用して受験することができる私立大学も増えており、受験生にとって『センター試験』は看過できない試験と言っても過言ではないものでした。
その『センター試験』が名前を変えて、2020年度から『大学入学共通テスト』として実施されることが決まっております。
今回の問題は、その『大学入学共通テスト』の中でも英語の試験についての話題で起こった問題でした。
民間英語試験の導入
従来の英語試験では、「読む・聞く」しか測定できず、「話す・書く」力を測れないとの提議が発端です。
ですがこれについて、民間への丸投げは責任放棄に等しい、との痛烈な批判も。
https://www.sankei.com/column/news/191031/clm1910310002-n1.html
この「話す」力の育成については、教育制度や現場の授業や教職員の能力などなど、様々な問題点があると思います。
が、今回の問題とは話がそれるので、これも割愛させていただきます。
いずれにしても、「話す・書く」を測定するために、民間で行っている英語試験を活用することにしたのです。
ここで、国側が『大学入学共通テスト』の英語試験で「話す・書く」を測定できる問題を作ろうとしなかったのがミソですね。
国側が統一試験を設置できていれば、この問題は起こりませんでした。
民間の英語試験とは言っても、様々あります。
国側が21年度入試での利用を認めた民間試験は「ケンブリッジ英語検定」「英検」「GTEC」「IELTS」「TEAP」「TEAP CBT」「TOEFL iBT」の7種類となります。
普通に学生生活を送っている生徒からしたら、なじみがない試験も多いことでしょう。
このように試験が様々あることで、「英語能力の統一した測定は不可能だ」と、民間英語試験利用に参加しない大学もありました。
私が住んでいる北海道で、名実ともに一番の大学である、北海道大学もそうですね。
ですが先に述べたように、民間英語試験を利用しない大学がいる中でも、7割以上の大学は利用予定でした。
開始時点から、足並みがそろってなかったんだね!
民間英語試験の問題点
経済格差
その試験の受験料が高額になることが、まず一つの問題です。
こちらの記事によると、最大で「51000」円(二回分)もの受験料が必要になる試験もあるそう。
https://buzzap.jp/news/20191031-minkan-eigoshiken/
私も何度か受験した英検も、今年(2019年度)から受験料を値上げしておりました。
これらの試験を、二回まで受験して成績を『大学入学共通テスト』に利用することができるんです。
大学入試センターに申し込み、IDの発行を受けてから、民間英語試験の受験時にそのIDを書きます。
利用は二回までで三回目の成績反映はできませんが、二回の受験内であれば違う試験を受けても大丈夫です。
このページに詳しく書いてあります。
https://edua.asahi.com/article/12700178
ですが、ここで新たな問題が発生します。
二回までしか成績が反映されないとしても、試験自体は何度でも受験することができるわけです。
裕福な家庭の受験生は、予行練習のように何度か受験をして手応えを掴んでから、受験時にIDを記入して成績反映をすることができるようになります。
逆にお金がない家庭は、たった二回に全てを賭けなければなりません。
今までの『センター試験』の受験は全て一発勝負で決まっていたわけですから、『大学入学共通テスト』の英語民間試験の利用では、ここで生徒間の格差による不公平が生まれてしまいます。
地域格差
そしてもう一つの問題は、地域格差です。
上に挙げた7つの英語民間試験ですが、開催される場所は決まっております。
試験によっては開催されない都道府県もあって、泊りがけで移動しなくてはならない事態にもなります。
英検は47都道府県全てで行われますが、基本的に県庁所在地で行われるため、近くの町で開催されない場合は、移動の時間と交通費がかかります。
このように、住んでいる場所によっての金銭的な負担や時間の負担が、不公平さに繋がるとして、大きな波紋が広がっていったわけです。
『センター試験』の時は一回だけ負担すれば良かったのですが、『大学入学共通テストとは別に民間英語試験のために、二回も追加で負担しなくてはならないからですね。
生まれた家庭と住んでいる場所なんて、受験生にはどうしようもないことだよね
身の丈発言
さて、これだけ問題点を抱えていた『大学入学共通テストの民間英語試験ですが、主導していた萩生田文科相の発言により、事態は大きく動きます。
10月24日、BSフジの番組で萩生田文科相は
「裕福な家庭の子が回数を受けてウオーミングアップできるみたいなことはあるかもしれない」
続いて
「自分の身の丈に合わせて2回(の英語民間試験)をきちんと選んで勝負して頑張ってもらえれば」
と発言いたします。
俗に言う「身の丈発言」です。
何が問題か、ここまで読まれた方ならお分かりいただけると思います。
上で様々提起されていた問題点について、全てに触れつつ、全ての責任を放棄した、と捉えられる発言になったわけです(萩生田文科相の実際の気持ちは分かりませんが)。
受験生を公平にしなくてはならない国が、全てを受験生側に丸投げした形になってしまったわけですね。
これは即座にマスコミにも取り上げられ、各方面から不満が爆発します。
萩生田文科相も陳謝し、発言の撤回をしましたが、覆水盆に返らず。
そんな波乱含みの中で迎えた11月1日。
ID申請が可能となる日。
萩生田文科相は『大学入学共通テスト』の英語民間試験の導入を見送る決断をしました。
見送る決断が当日って!!
まとめ
『大学入学共通テスト』の英語民間試験の導入に端を発した、一連の流れはご理解いただけたでしょうか。
萩生田文科相の「身の丈発言」で、問題点が表面化して一般の人の目にも留まるようになったのですが、まだまだ問題の渦中です。
これからどうなっていくのか、動向を見守る必要があります。
ちなみに、『大学入学共通テスト』での英語民間試験の導入が見送られただけであり、上で述べたようにすでに早稲田大学などで実施している受験時の英検利用などは、そのまま変わりません。
各メディアで「英語の民間試験」の導入が延期、と発表されていますが、正しくは「成績提供システム」の導入が延期です、とこのサイトにあります。
https://passnavi.evidus.com/gaibukentei/index.html
勘違いしやすいポイントなので、お気を付けください。
これはどこのニュースでも言及してないから、間違えそうだね
さて、色々話しましたが、何はともあれ一番大変なのは受験生です。
何を差し置いても受験生にとって、一番良い結果になるように期待します。
「話す」力も身につくように!
以上
「『身の丈発言』による英語民間試験の問題に関するまとめ」でした♪