自宅収録の環境を整える~音響監督に勧められた機材を購入~
私はナレーションを生業にしているのですが、この業界では仕事の在り方が変わってきています。
今まではスタジオに出向いて録音するのが基本でしたが、最近はコロナウイルスの影響で自宅録音が多くなりました。
自分でナレーションを収録して、データを元請けの音響監督に送るのです。
そのため、自宅での収録のために、機材を揃える必要が出てきました。
今回は新たに購入した機材の紹介をします。
収録環境
プロには分かる機材の大切さ
ナレーションの仕事でお世話になっている音響監督さんから、箴言を頂きました。
- 「スキルも大事だけど、道具がない人に仕事は来ない」
- 「例えば、運転が上手くても車を持っていない個人タクシーに、仕事はない」
確かにその通りです。
いくら発声や滑舌や表現が上手くても、機材が揃っていなくてブレスやノイズが入りまくりのナレーターに、仕事は来ません。
私はナレーションはプロでも、音響や編集に関しては素人です。
自分で録ったデータを送ったら、「レベルが高すぎて使えない」*1と言われたことがあります。
もちろん手を抜いたわけではなく、録音した音源を自分で何回も聞いて確認したんですけどね。
それでも「レベルが高い」ということがさっぱり分からないのが、素人です。
他にも、編集をするプロだからこそ気付くこともあります。
マイクに余計な音が入っていたり、音にズレがあったり、編集ソフトで作業をしている段で気になることもあるでしょう。
そういった音響さんにとって煩わしいことを、今まではナレーターが気にする必要はありませんでした。
設備が整っているスタジオ録音ですし、音響さんもすぐ傍で収録の声を聞いているから、すぐに修正できるのです。
しかし宅録であれば、声を録るナレーターが、そこにも気を遣わねばなりません。
音響監督さんはプロなので、もらったデータである程度の修正はできますが、限度というものがあります。
私も仕事して受ける以上は良い音声を渡したいので、録音に適した環境作りを始めました。
以前の収録環境
ポップガード
ポップガードという道具があります。
日本語で言うと「風防」です。
お恥ずかしながら、実は私はこのポップガードという名前を知りませんでした。
「風防」=「マイクに被せるスポンジ」だと思っていたのです。
マイクスポンジの例
その考えは間違ってはいなかったのですが、「風防」=「ポップガード」でもあったのです。
知ることになった切っ掛けは、音響さんに「息がマイクに入ってしまう」と相談したのが最初でした。
「風防を使ってないの?」と聞かれましたが、既にマイクスポンジを使っています。
「風防は使ってるんですけど……」と答えるも、音響さんと私でどうにも話が合わない。
何かがおかしいと思って調べた結果、風防は風防でも二種類あって、マイクに息を入れないポップガードという道具の存在を知りました。
知れば知るほど、仕事で必要な物だと分かったので、すぐに買いました。
そのポップガードがこちら
ただの網にしか見えないですよね。
どれくらい効果があるか。
試しに、手を口の前に出して言葉を喋ってみてください。
普通に話す分には、手に息が当たることはありません。
しかし「ポップガード」の「ポップ」と言ってみるとどうでしょう。
絶対に、手に息が当たるんです。
その息がマイクに拾われてノイズになってしまうのを防ぐのが、このポップガードです。
ただの網に見えて、息を下に落とす構造になっており、マイクまで余計な息を届かせない製品だそうです。
ナレーターの私には関係ないですが、これを使って歌うことで高音が綺麗にマイクに入るそうで、歌い手さんには必須アイテムとのこと。
布製と金属製があって、性能的にも衛生的にも、金属の方が良いらしいです。
私は仕事で使うため性能が良い方がいいので、金属製のポップガードを買いました。
2000円もしないので気楽に買えますし、実際に使ってみるとすごくテンションが上がります。
まるでプロみたい!
……プロですけど。
メリットは他にもあります。
収録をしているとつい意気込んでしまい、マイクに近づきすぎてしまう時があります。
このポップガードがないとマイクに近づいたり離れたりして、音のレベルが一定にならなくなって、音響さんは困ります。
そうならないように、マイクとの距離を一定に保てるのも、このポップガードの効果です。
リフレクションフィルター
もう一つ、音響さんに勧められて買った道具があります。
それがリフレクションフィルターです。
突然言われても「リフレクションフィルターとは何ぞや?」でしょうから説明しますと、反響を上手に調整してくれる壁のことです。
普通の家は、録音に適した反響を考えた構造で、作られておりません。
後ろで誰かが会話をしていても、声は聞こえますよね?
あれは、声が壁に反響して届いているからです(それが全てではありませんけど)。
ただマイクに向かって喋るだけだと、反響した声が微妙にズレて録音され、編集のプロの音響さんには堪ったものじゃない仕上がりになります。
それを抑えるのが、このリフレクションフィルター。
中からの音を外に通さずに吸収し、外の音はシャットアウト。
まさに、録音のために存在する道具です。
これも値段はピンキリですが、私は仕事で使うし良い物を買おうと思い、12000円以上する大き目の物を買いました。
実は「そんなに効果があるのだろうか」と半信半疑だったのですが、これを設置して録音してみたら、なんと。
素人の私にも分かるレベルで、変化がありました!
誰でもそうですが、自宅はスタジオではないので、周囲の余計な音が聞こえてきます。
耳を澄ませてみてください。
外のカラスや鳥の鳴き声。
子どもの遊ぶ声や、主婦の立ち話の声。
車のエンジン音や郵便バイクの音や、ごみ収集車の音。
アパートなら、上下左右の住人の水を流す音などの生活音も聞こえます。
今まで意識していなかったとしても、録音する時になって、世界は音であふれていると気付くことでしょう。
リフレクションフィルターを使うと、これらがシャットアウトされ、勝手にマイクに音が入ることはまずありません。
さらに良い点として、自分の声も綺麗にマイクに録音されるようになりました。
これは反響構造によるのでしょうが、ここまで劇的に変わるなら、もっと早く買っておけばよかったと思います。
正直、12000円はお得だと感じました。
まとめ
購入した商品を全て使ってみますと、こうなります。
マイク40000円+リフレクションフィルター12000円+ポップガード2000円の、合計54000円です。
物凄く満足しているのですが、一つだけ不満点を言わせてください。
リフレクションフィルターが大きすぎて、パソコンモニターが全く見えません(笑)。
パソコンで原稿を読んでいたので、対策を考えないといけませんが、まぁこれは何とでもなりますね。
今後も、色々と道具を揃えていこうと考えています。
2020年5月12日にYouTubeで公開する小説朗読動画から使うので、音がどう変わるかお聴きになってみてください。
ますます収録が楽しくなってきました!
以上
「自宅収録の環境を整える~音響監督に勧められた機材を購入~」でした♪
*1:音が大きすぎて割れること